『人が壊れるマネジメント』を読んだ。
自分は過去に、仕事が原因で休職したことがある。その状態でこの本を読むと、「これ自分のことでは?」と思うところがかなり多かった。ある意味、過去の答え合わせみたいな本だった。
「こうすると壊れます」が、自分にかなり当てはまった
この本では、人が壊れていくマネジメントのアンチパターンがたくさん出てくる。その中で、特に自分に重なったのが、きちんと情報を伝えない、緊急対応をずっと重ねる、適切なフィードバックをしない、期待する役割が不明瞭、タスクの目的が不明瞭、意思決定に参加させない、といったものだった。どれも、自分が休職するまでの間に感じていたことだった。
特に、「何のために日々心を砕いて仕事をしてきたのかわからない」という心理状態について書かれていたところは、本当に自分のことかと笑った。当時は全然笑えなかったけど。
振り返ってみると、自分が壊れた理由はひとつではなかったと思う。何か決定的な出来事があって、一気にダメになったわけではない。
役割が増える。緊急対応が増える。何を期待されているのかわからない。やったことに対して、適切なフィードバックがない。意思決定には入れない。でも結果については責任を感じる。そんな状態が続いていた。
当時は、それぞれを別の問題として考えていた気がする。ある時は自分のコミュニケーションの問題だと思った。ある時は自分の能力の問題だと思った。ただ忙しいだけだと思ったこともあった。
でもこの本を読むと、それらが全部「人が壊れる環境」としてつながって見える。そうか。あれは、自分の中だけで起きていた問題ではなかったのか。そんな感じがした。
まず対話してほしかった
今振り返って、会社やマネージャーに何をしてほしかったか。最初に思うのは、1on1などで対話のアクションを取ることだ。
まず話す。これがないと、そもそも問題として認識していない、ということになる。最近どうなのか。何か困っていることはないのか。今の役割をどう感じているのか。そういうところからでいい。
そこから改善案まで一緒に考えられるとベストだと思う。ただ、そこまで求めるのは甘えもあるのかもしれない。自分で考えて、自分で伝えて、自分で改善するべき部分もある。
でも一方で、役割を明確にするとか、適切なフィードバックを返すとか、タスクの目的を伝えるとか。これは本人が頑張って改善する範囲ではないと思う。会社やマネージャーの仕事だ。
本人がどれだけ頑張っても、期待される役割が曖昧なままなら、何をゴールにしたらいいかわからない。目的を共有されなければ、自分で勝手に正解を作るしかなくなる。適切なフィードバックがなければ、その正解が合っていたのかもわからない。そう考えると、マネージャー側も、自分たちの行動を見直す必要があるのだと思う。
もちろん、忙しくてそれができないのも重々承知している。自分もマネジメントに近いことをやっていたので、人を見ることに時間を使えない状況があるのはわかる。タスクもある。トラブルもある。顧客対応もある。気づいたら、人と話す時間が後回しになる。
でも、人を見る余裕がない状態を放置すると、その先で本当に人が壊れることもある。この本を読んで、それをかなり実感した。
感情を「そういうもの」で終わらせないでほしかった
一方で、本に少し物足りなさも感じた。感情の部分を、もう少しロジックで説明してもよかったんじゃないかと思う。感情を軽視したいわけではない。むしろ、感情がどうやって生まれるのかを説明してほしかった。
例えば、役割が不明瞭になる。自分が何を達成すればいいのかわからなくなる。うまくやれているのかもわからない。フィードバックもない。だんだん、自分が役に立っている感覚がなくなる。やる気も落ちる。そういう流れだ。
心理学や行動科学と照らして、「こういう行動は内発的動機にこう影響する」「その結果、こういう考え方や行動が起きやすくなる」みたいな説明がもう少しあってもよかったと思う。
なぜそう思うかというと、自分が知っているロジカルで優秀な経営層の人たちは、感情面がわからないからといって、人の苦しさを軽視してはいなかったからだ。感情そのものを同じように感じることはできなくても、精神的な苦痛が存在すること、その苦しさは理解していた。それは心理学などを学んだからかもしれない。周りの人を見て、考えた結果かもしれない。
感情そのものを理解できなくても、「こういう考え方をする人がいる」「こういう環境では、人はこういう反応をする」と理解することはできる。むしろロジカルな人ほど、因果関係として示されたら理解できるんじゃないかと思う。
この本を読む人は、そもそも人を壊すようなマネジメントをしない人も多い気がする。人のことを考えたい。良いマネージャーになりたい。そう思っているから、この本を手に取る。
でも本当に届けたい相手は、そこだけではないと思う。人の感情がよくわからない人。「仕事なんだからやるしかない」と考える人。自分自身は同じ環境でも耐えられるから、他の人も大丈夫だと思ってしまう人。
そういう人にも、「あなたが共感できるかどうかとは別に、人間にはこういう反応がある」とロジックで渡せたら、少し違うんじゃないかと思う。
でも、これはマネージャーだけの本ではない
読みながら、もうひとつ思ったことがある。これ、別にマネージャーだけが読む本ではないな、と。「人が壊れる」を「人間関係が壊れる」と読み替えると、ほとんどの内容が自分にも返ってくる。
例えば同僚にタスクを頼む時。目的を言わずに「これやっといて」だけで渡す。それだけでも、相手は疲れるかもしれない。何のためにやるのかわからない。どこまでやればいいのかわからない。結果をどう使うのかわからない。
それなら、「こういう問題があって、それを確認したいからこれをやってほしい」と一言伝えたほうがやりやすい。
フィードバックだってそうだ。何かやってもらって「了解」だけで終わるのか。「ここ助かった」と返すのか。それだけでも相手の感じ方は変わるかもしれない。もちろん毎回褒めまくる必要はない。でも、自分が相手の仕事をどう受け取ったかを返す。それは上司と部下だけの話ではない。同僚同士でもできる。
意思決定もそうだ。一緒に仕事をしていたのに、自分だけ知らないところで話が進んで、結果だけ降ってくる。これも普通にしんどい。マネージャーじゃなくても、誰かをそういう状態にすることはある。
そう考えると、この本に書いてあることは、「良いマネージャーになる方法」というより、「人と壊れずに仕事をする方法」に近い気がした。
マネージャーも、そういう役割にいるだけなのかもしれない
マネージャーというと、なんとなく特別な仕事に見える。人を管理する人。チームを動かす人。評価する人。でも、今回この本を読んで、少し見え方が変わった。
マネージャーも、結局は人と人の間で仕事をしている。ただ、役割として、人との関係に責任を持つ範囲が広い。
期待する役割を伝える。目的を伝える。フィードバックを返す。状況を見る。対話する。そういう、人と仕事をする時に本来必要なことを、より強く求められる役割なんだと思う。
そう考えると、自分にも関係がある。マネージャーじゃなくても、人と仕事をする。誰かに依頼する。誰かの成果物を見る。誰かと相談する。誰かと何かを決める。
その時に、相手を壊さないような仕事の仕方をできるか。これは自分も考えたい。
「こういうことが起きているかも」で読んでほしい
自分にとって、この本は過去の答え合わせみたいな本だった。なぜあの時あんなにしんどかったのか。自分の中ではうまく説明できなかったものが、「こういう環境では人が壊れる」という形で並んでいた。
もちろん、これを読んだからといって、誰かを責めたいわけではない。マネージャー側にも事情はある。忙しいこともある。本人なりに良かれと思ってやっていたこともあると思う。
それでも、人を壊してしまう仕事の仕方はある。そして、それはマネージャーだけが気をつければいい話でもない。
マネージャーでない人にも、一度手に取ってほしい。「自分も誰かにこういうことをしていないかな」と考えるだけでも、読む意味があると思う。
マネージャーには、「自分が人を壊しているのでは」と身構えて読むより、「もしかすると、自分の周りでもこういうことが起きているのかもしれない」くらいの気持ちで読んでほしい。
自分もそうやって、自分の仕事の仕方を見直していきたい。